こっちを見て。
「またまた〜隠さなくてもバレバレだよ〜」
「隠してないよ!?」
「えーと、咲花さんの言う通り、俺達は別にそういうのじゃないから」
顔を真っ赤にする陽葵を庇うように松川が前に出る。
その爽やかで落ち着いた様子に、クラスメイトも少しテンションを落ち着かせた。
「だから予定通り俺と咲花さんは午前と午後で分かれます。じゃあ午前班希望の人は手上げてー」
ざわざわと騒ぐクラスメイトを宥めるように声を掛けながら、松川はさり気なく進行する。
……なんか気に食わない。
じっと片肘をついたまま松川を観察していると、その隣から何やら視線を感じた。
すっと視線をずらすと、陽葵が俺を見つめてそわそわしているのが見えて。
『手上げないの?』
そう訴えるような表情を浮かべていた。
……なんだよ。
俺はそんな陽葵から目が離せなくなり、気付けば俺の左手はゆっくりと上げられていた。
「え……支倉くん午前なの?」
「じゃああたしも午前にしよっかな」
教室内から微かに聞こえる女子の声なんか気にもせず、俺はじっと陽葵へ視線を向ける。
陽葵は手を上げた俺を見るなり、安心したように笑顔を零してぐっと親指を立ててみせた。
……馬鹿。
と、にやけそうになるのを必死で堪えながら俺は陽葵から目を逸らす。