花の都の王子は、異世界から来た女の子が愛しくてたまらない。
「あの、どうしたら帰れるんですか」
「だから、帰れないよ。」
「……なんでですか、じゃあ一般的には」
「あちらにいる肉親……大切な人に呼び寄せられると同時に本人が帰りたいと強く願うこと。」
それじゃあ、私は結局は無理じゃん……。
「そう、ですか……教えてくださってありがとうございます」
だって大切な人なんていないし、彼らが私を大切だと思うはずがない。
「……香月ちゃん?」
「ご、ごめんなさい……あの、王子様」
王子様に声を掛けると、左手を優しく王子様の手で包み込むように触れた。
「我、花咲棗。花咲を受け継ぐ者……─︎フルールの神々よ今誓おう」
すると、私の足元は光った。