花の都の王子は、異世界から来た女の子が愛しくてたまらない。
建物の中に入ると、長い廊下を歩く。
そこを抜けるときれいな庭があり眺めていれば「香月ちゃん、これ上るよ」と王子様は言う……目の前には長い階段が続いている。
これ、昇るんだよね……? 嘘……私、体力が全くないのに。
「じゃあ香月ちゃん行くよー」
「あ、はい……頑張り、ひゃっ」
私は階段に登ろうとしたのにヒュッと体が浮いた。え、何が……って、はしたない声が出ちゃったよっ。
「じゃあ動かないでね」
「あ、あの下ろしてくださいっ」
「黙って、大人しくしてて」
いやいや、無理無理無理! だって、こんなお姫様抱っこなんて……初めてなのに。恥ずかしすぎるんだけどっ!
「それに階段の途中で下ろせるわけないでしょ」
「そうですけどっ! 誰かに見られたりしたら」
「大丈夫、今は武人しかいないから」
……それが嫌なんだけど。
「王子はね、可愛い婚約者を抱き上げるものなんだよ」
意味わからない言葉を言って、とある部屋に着くまで下ろしてくれなかった─︎─︎─︎……