花の都の王子は、異世界から来た女の子が愛しくてたまらない。
「私には彼氏なんて必要ないのよ」
「そんなんじゃ結婚ずっとできないですよ。先輩可愛いんだから、すぐに男ゲットできますって……」
結婚は女の幸せ、だなんて言われるがそんなことはない。今だって十分幸せだ。
それに私を可愛いだなんて、馬鹿にしてるのだろうか。
「本当に先輩って仕事人間ですよね。すぐ結婚適齢期きちゃいます」
なんとでも言えばいいでしょ、自分の人生は自分で決めるよ。
それに家族なんていらないし誰かを愛することはできない。したくない。
恋愛する暇があるなら、仕事をしていたいしスキルアップだってしたい。
そう思ってしまうのは、きっと……私自身の家庭環境が原因だと思う。
幼い頃は幸せな普通の家庭だった。母と父、双子の弟と私……でも、中学入学前に母は亡くなり父が再婚するとそこから少しずつ崩れていった。
『あなたがいるから、あの人は私を見てくれないのよ』と、私に暴力を振るう義母。
『香月は、あいつによく似ている』と言って、中学卒業する時には私を娘としてではなく“女”として見てくるようになった父。
二人にやられてる時に、見て見ぬ振りをして助けを求めた時に逃げた……弟の香南(かなん)。