目覚めのキスを君に

フィリップはそう言い、オーロラの頭を優しく撫でる。フィリップはオーロラをまるで自分の恋人のように扱う。頭を撫でたり、ハグをしたり平気でするのだが、オーロラは決して嫌ではなく、むしろ幸せだった。

しかし、フィリップに恋人のように接されるたびにオーロラの頭の中に不思議な映像が流れてくるのだ。

美しいドレスではなくシンプルなデザインのワンピースを着たオーロラと、王子のような格好ではなくカジュアルな服を着たフィリップが笑い合っている。そして、愛おしげに唇を何度も重ねるのだ。

「オーロラ、どうしたの？」

この記憶は何だろう、とオーロラが考えているとフィリップがオーロラの顔を覗き込む。最近はこんな風に訊かれることが多くなった。

「何でもないわ」

オーロラはいつものように笑い、誤魔化す。いつもならフィリップも「そっか」と言って終わりだった。しかし、今日は違った。

「ねえ、いつまで現実から逃げてるの？」