イジメ返し―新たな復讐―
椅子から立ち上がろうとしたものの、足が小刻みに震えているせいで力が入らない。

「――あっ、いたいた。愛奈ちゃーん」

そのとき、教室の扉付近でわたしの名前を呼ぶ声がした。

「エマちゃん……？」

視線を向けると、そこには優しく微笑んで控えめに胸元で手を振るエマちゃんの姿があった。

わたしと同様にクラスメイト達も一斉にエマちゃんに視線を向ける。

「えっ、なんで愛奈とエマちゃんが……？」

「ヤバい、超可愛いね」

エマちゃんをクラスメイト達は羨望のまなざしで見つめる。

この学校の中でもひと際目を引く存在のエマちゃんがわざわざこのクラスまでやってきてわたしに声をかけていることがみんな不思議でならないんだろう。

正直それはわたしも同じだった。

今朝初めて話したばかりのエマちゃんが教室にやってくるなんて想像もしていなかった。

「次の時間、化学なんだけど教科書忘れちゃって。貸してもらえないかな？」

わたしの席へ歩み寄ってきたエマちゃんは申し訳なさそうにそう言った。

「あっ、うん。いいよ。ちょっと待ってね」

わたしは慌てて自分の机の中から化学の教科書を引っ張り出してエマちゃんに差し出した。

「ありがとう、愛奈ちゃん。助かる」

教科書をギュッと胸に抱きしめて微笑むエマちゃんはお世辞抜きに天使のようだった。

こんななんて事のないやりとりに気持ちが救われる。

でも、そんな時間は長くは続かない。

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