イジメ返し―新たな復讐―

「呼んでんだから、こいよ！」

そんな怒声がすぐそばで飛んだ瞬間、わたしの机の上にあった教科書やペンケースをカスミちゃんがはたき落とした。

四方八方に散らばっていくわたしの私物。

あ然として顔をあげると、そこにいたのは鬼のような形相を浮かべるカスミちゃんだった。

その隣で志穂ちゃんが『バカな奴。カスミ怒らせるなんて』と非難するような視線をわたしに向けた後、今度は興味なさげにスマホを弄りはじめた。

「つーかさ、今愛奈としゃべってんのあたしだから。割り込むんじゃねーよ！」

「そうだったの？エマ、気付かなくて。ごめんね。えっと……あなたの名前、何だっけ？」

エマちゃんの問いに、名前を知られていなかったことに気を悪くしたのかカスミちゃんが眉間にしわを寄せた。

「別に知っててもらわなくていいし。さっさと自分の教室帰ったら？」

「それはできないよ。だって、友達が酷いことされているのを見ちゃったんだもん」

「……は？」

「どうして机の上の物を落としたりしたの？大声で怒鳴って、何かを命令するのもよくないよ」

「アンタさ……あたしに説教する気？」

カスミちゃんがエマちゃんに体を向け、のけぞった態勢を取りながら腕組みをする。

「説教じゃないよ。でも、これってイジメだと思う。イジメの現場を目の前で見てこのままにしておくわけにはいかないもの」

「は？イジメじゃないし。あたしと愛奈は小学校からの友達なの。最近転校してきたアンタに何がわかるっていうの？」

「友達にだったら、何してもいいの？机の物をわざと落としても？」

「あんなのただの冗談だから。なにマジになってんの？ねっ、愛奈？」

カスミちゃんがわたしに視線を送る。