イジメ返し―新たな復讐―
「愛奈ちゃんはこのままでいいと思ってる?」
「このままでって?」
目の下の涙を拭って聞き返す。
「高校を卒業するまでカスミちゃんや志穂ちゃんにイジメられ続けるのは嫌じゃない?」
「そんなの嫌だよ。嫌に決まってる。でも、逃げられないの。逃げ場なんてないの。だからこうやって耐えるしかない」
「それは違うよ。やられっぱなしじゃダメ。どんな理由があったとしてイジメという行為は正当化してはいけないの」
「それはそうだけど……。我慢する以外に方法はないの。イジメられなくなったら嬉しいけど、そんなことありえない」
わたしは高校を卒業するまでずっとカスミちゃんにイジメられ続けるだろう。
「無理に耐えようとすればいつか心を壊すよ。そうなってからじゃ遅いの」
「そうかもしれないね。でも、それしか選択肢はないの。下手に反抗でもしたらさらに酷いことをされる……。それが嫌なの」
わたしの言葉にエマちゃんの表情が一変する。
真っすぐわたしを見つめるその瞳には確かな決意が感じられた。
「やられたら、やり返すの」
「え……?」
「いじめっ子はね、妙な自信を持ってるの。自分はイジメられないだろうって。そのバカみたいな自信をへし折ってやればいいの」
「どういうこと……?」
「愛奈ちゃん、イジメ返しって知ってる?」
エマちゃんは真っ直ぐわたしを見つめた。
「き、聞いたことはあるけど……」
昨年、ワイドショーや週刊誌の見出しに【イジメ返し】というワードが踊っていた。
イジメられた人間がイジメた人間にイジメ返しをするというものだった。
そんな中、ある一人の少女がネット上で称賛を受けていた。