イジメ返し―新たな復讐―
教室に入ると、みんなの視線が一斉にあたしに集まった気がした。

その頃には顔のことが原因となり他人からの視線に酷く敏感になっていたあたしはオドオドしながら自分の席に座り周りの人の反応を伺った。

イジメが更に悪化するかもしれないと恐ろしくてたまらなかった。

けれど、みんな意外な反応をしめす。

『マスクすると別人みたいだね』

そばにやってきたクラスメイトのその一言にあたしの中である閃きが生まれた。

そうだ。隠せばいい。隠してしまえばいいんだ。

自分のコンプレックスである顎と鼻を隠せばあたしだってそこそこ可愛い。

確かに少しぽっちゃりだけど、体は痩せようと努力すればどうにだってなる。

その日からあたしは常にマスクをつけるようになった。

春夏秋冬、３６５日、マスクをつける生活。

マスクをしなければあたしは生きていけない。マスクはあたしにとって必要不可欠なものになっていた。

その結果、あたしへのイジメはわずかに落ち着いてきた。

男子はほかにからかう相手を見つけてあたしの顎をいじらなくなったし、それを真似るように女子達は手のひらを返したようにあたしに声をかけてきた。

でも、風邪が治ってからもマスクをしているあたしを先生や友達は明らかにいぶかしげに思っている様子だった。

だから、『ハウスダストや花粉のアレルギーがひどくなってマスクを外すことができない』と説明した。
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