イジメ返し―新たな復讐―
両親はマスクをすることを反対していたしつける必要なんてないと言っていたけど、『だったらどうしてこんなひどい顔であたしを生んだの！？』『マスクがなくちゃ家から出られない！不登校になってもいいの！？』と抵抗すると何も言えなくなったようだ。

それからあたしはずっとマスクをつけて生活をしていた。

高校に入学してからそれは続いている。

友達と食事をするときだけはマスクを下げ顎にかけたまま食事をとっている。

『食事中くらいマスク外したら？』と友達に言われてもあたしは断固それを拒否した。

絶対に見られたくなかった。この顎を見られたらまた誰かにイジメられてしまうかもしれない。

高校になってようやく心を許せる友達もできた。

クラスに居場所があるということがどんなにありがたいか実感する。

もう教室の中でビクビクする必要なんてない。

それだけのことにこれ以上ない幸せが広がる。

でも、手放しで喜べない事情があった。

愛奈だ。あたしの幸せは愛奈の不幸の上に成り立っていると分かっていた。

あの日……、カスミちゃんから踊れと指示された日、あたしは恐怖に支配されていた。
< 150 / 292 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop