イジメ返し―新たな復讐―
「それは出来ない」

「なんでよ。早くとっちゃいなってー。先生いなくなってからまたつければいいじゃん」

今は香織のことなんて構っていられない。

どうやったらこの場を切り抜ければいいのかそのことに頭をフル回転させる。

逃げる……?とりあえず、この騒ぎにまぎれて教室に戻ろうか。

でも、きっと先生はあたしの顔を認識しているだろう。

だとしたら、逃げてもムダだろう。

どうしよう。どうしたらいい?

「だ、ダメだ!これじゃ収集が付かない。今すぐ全員取れ!廊下にいる生徒も全員だ!」

先生が苛立ったように叫ぶ。

とりあえず、他の理由をつけて今日だけは先生にマスクの着用を認めてもらおうか?

きっと明日になればエマちゃんたちだってマスクをつけてきたりはしないだろう。

そうなれば明日からもあたしはまたマスクを――。

「――ねぇ。佐知子ってば」

その瞬間、香織があたしの腕を掴んで引っ張った。

その程度のこといくらされてもいつもだったらイラつくことなどなかったはずだ。

でも、追い込まれている今の状況のあたしに心の余裕はなかった。

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