イジメ返し―新たな復讐―
歪んだ家族の形
あれ……?
玄関のカギを開けて中に入ると、埃一つ落ちていない綺麗な玄関にピカピカに磨き上げられた男物の革靴が揃えて置いてあることに気が付いた。
ハッとした。今日は何日だっけ……?そうだ。今日は6月6日……だ。
「た、ただいま」
真っ先にリビングに向かうと、足を大きく開いてソファに座る父と、立ったまま頭を垂れている母の姿が視界に飛び込んできた。
わたしが入ってくるなり、二人の視線はすぐさまわたしに向けられる。
その視線には非難の色が色濃く刻み込まれている。
「今日は何の日だ?」
言われると思った。
わたしはおずおずと母の隣に移動して「おじいちゃんとおばあちゃんの結婚記念日です」と答えた。
「そうだ。それなのに、どうして電話の一本でも入れてお祝いの言葉をかけない?ん?お前らは言われないとそんなことすらできないっていうのか?」
父は顔面を怒りで赤らめ口から大量の唾を飛ばした。
そうだった……。ついうっかりしていた。
父の両親……わたしからすると、おじいちゃんとおばあちゃんの誕生日と敬老の日、それに結婚記念日はどんなに忙しくても必ず電話をするか会いに行かなければいけないというのが我が家の決まり事だった。
それをすっかり忘れていた。