イジメ返し―新たな復讐―
「……ハァ。まったく気が利かない女だ。もう出かけると言っただろう。どうして言われる前に着替えを用意しないんだ」

「え……?着替え……ですか?」

「バカ野郎!!両親の結婚記念日だぞ?先月新調したスーツを着ていくに決まってるだろ!」

「あぁ……はい。今、急いで準備をしますので……」

母が慌てたようにリビングを飛び出していく。

わたしは火の粉が降りかからないようにいそいそとリビングを出て2階の自室へ向かった。

物心ついた頃にはこの家が普通の家でないことは薄々気付いていた。

我が家の全ての権限は父にある。

父が言ったことに逆らってはいけないし、刃向かってはいけない。

例え違うと思っても口にすることは許されない。

粘着質で高圧的な父のことが昔から今も現在進行形で嫌いだ。

母は父の言いなりだ。一度、母が父に逆らったとき、父はためらうことなく母の頬に手の平を叩き込んだ。

『誰の金で生きていると思ってるんだ!?』

『だ、だったら私も仕事します!もう愛奈だって手がかからないし、私も働きます!』

『お前のような無能には無理だ!もし仮に仕事をして家のことをおろそかにするようなことがあれば絶対に許さない。お前はそれでも働くというのか?俺の給料が不満だというのか!?俺はこの辺りの人間よりも高給取りだ!お前は俺の給料を少ないというのか!?そう言いたいんだろう!?』

父は激高し、論点をすり替えて母を責め続けた。

結局、母は父を言い負かすことは出来なかった。
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