イジメ返し―新たな復讐―

「ごめん、で済んだら警察なんていらないの。でも、ちゃんと反省しているならこれぐらいで許してあげる」

かすかに遠くの方から救急車のサイレン音がした。

それに気付いたエマちゃんはそっとあたしの首から手を離した。

「ゴホッゴホッ！！」

一気に肺に酸素が送られ、思わず咳き込む。

あまりの苦しさに自然と目には涙が浮かんだ。

どうしてあたしが！！沸き上がってくる感情を抑えることはできなかった。

「た、確かにあたしは愛奈をイジメたかもしれない！！でも、イジメてたのはあたしだけじゃない。香織だって杏奈だって一緒になって愛奈をイジメた！！それに、カスミちゃんや志穂ちゃんはどうなの！？あの子達の方がよっぽど前から愛奈をイジメてた！！イジメ返しするなら、二人にするべきじゃないの！？どうしてあたしがこんなことをされなくちゃいけないの！？どうしてあたしがこんな目に……！！」

そう叫ぶと、エマちゃんは無表情のままあたしをじっと見つめた。

「あなた、何にも反省してないのね。イジメという行為を軽く考えているからそういう言葉が出てくるの。自分のしたことを棚に上げて正当化しているの。何もかも全部人のせいにする自己中心的で浅ましい人間。やっぱり許すことなんてできない。今、ここであなたを許したらあなたはまた懲りずに同じことを繰り返すわ」

「な、なんなの偉そうに！！」

救急車の音がどんどん近付き、やがて玄関の前に着いた。

「もう帰ってよ！！アンタに声をかけたあたしがバカだった！！」

そう叫んだと同時に、エマちゃんはポケットから取り出したスマホを顔の前で掲げた。

「さっきの会話、全部録音してあるの。あれ、カスミちゃんたちに明日聞いてもらうから」

「え？」

「それと、これ、昨日SNSにアップされたものなんだけどね結構バズってるの。知ってる？」

エマちゃんはそう言うと、何かの動画をあたしに見せた。

人のまばらなホームで中年の男が逃げている様子が映し出されている。