イジメ返し―新たな復讐―
山しかないこの町から出てきらびやかな世界にあたしは羽ばたくのだ。

毎晩美容院でセットされたヘアスタイルで店に出勤し、スパンコールのついたロングドレスに身を包み、お酒を注ぎながら満面の笑みで客を迎え入れる。

枕営業を嫌がる女の子は多いけど、あたしはむしろ買って出るぐらいの気持ちでいる。

男は好きだ。優しくしてくれてお金まで落としてくれる男ならばなおさらのこと。

きっと夜の仕事はあたしの転職になる。ナンバー1にならなくてもいい。

女の世界だし、多少蹴落としたり蹴落とされたりすることはあるはずだ。

でも、カスミにメンタルを鍛えられたあたしはきっとそこそこうまくやれるだろう。

カスミとは高校を卒業したらおさらばするつもりだ。連絡を取り合うことも一切なくなるだろう。

別にそれでもかまわないと思った。カスミとは長い時間一緒にいたけれど、心を許したことなど一度もない。

あの女は信用ならない。

人を人とも思わない極悪非道の行為をして楽しむ最悪な人間だ。

あの子に目をつけられてしまえば最後、心も体も痛めつけられてボロボロにされる。

同級生で何人カスミにやられた子がいただろう。

引っ越してしまった子、心を病んで引きこもりになった子、自殺未遂を繰り返しているという子。

どの子もカスミになにかをしたわけではない。でも、ちょっとでも気に障るようなことをすればカスミは許さない。

イジメ……ううん、そんな言葉では表せない。それだけの行為をカスミは平然とした顔でする。

恐怖を覚えるものの、カスミから離れようとすれば今度は自分がどんな目に合うか分からない。

高校を卒業するまであたしは何としてでもカスミという人間にしがみついて生きることに決めていた。

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