イジメ返し―新たな復讐―
昼休み、あたしは愛奈を屋上に呼び出した。
「な、何か用……?」
危険を察してか明らかに身を固くする愛奈のことをあたしは見下ろした。
愛奈には申し訳ないけれど、ここは犠牲になってもらうしかない。
自分と愛奈を天秤にかけたら、どうやったってあたしは自分を取るだろう。
誰だってそう。自分が一番可愛いのだ。
「別にアンタに対してどうこう思ってるわけじゃないけど、カスミがやれっていうから。まっ、許してよ」
あたしはそう言うと愛奈の顔を平手打ちした。
パチンっという乾いた音。頬を押さえながら愛奈が驚いたようにあたしを見つめる。
「そんな目しないでって。うちもやりたくてやってるわけじゃないんだからさ」
「やりたくてやってるわけじゃない……?だったら、やらなければいいんじゃないの?」
「え?」
愛奈の言葉に目が点になる。昔から愛奈のことは良く知っていた。
自分の意見はどんな時だってグッと飲み込んで言いたいことの一つも言わない子だった。
「カスミちゃんに従わなければいいのに」
「えっ、何。愛奈ってばどうしちゃったの?」
突然の愛奈の変貌ぶりに笑いが込み上げてくる。
「なに、キャラ変?ちょっとやめてよ。そういうの愛奈らしくないって」
「わたしらしいって何?ずっと言いたいこと我慢して抑え込んで、好きなようにやられる子?カスミちゃんや志穂ちゃんたちにイジメられてもずっと黙ってるのがわたしらしいってこと?バカにしないで!」
血走った目であたしを睨み付ける愛奈に思わず後ずさる。