イジメ返し―新たな復讐―
「アンタ、それどうしたの?」

「な、なにが?」

「唇切れてんじゃん」

「あぁ、これ。ちょっと乾燥しちゃってさ。リップちゃんと塗らないとダメだね」

「ふぅーん。乾燥……ねぇ……。で、愛奈のことはやったの?」

教室に戻るとカスミはじっとあたしの顔を見つめた。必死にトイレで口紅やグロスを塗りたくって誤魔化そうとしたものの、カスミの目はごまかせなかったようだ。

「まぁね。引っぱたいたら泣いてたよ」

話を大きくして虚勢を張るとカスミは目を細めた。

「アイツ、意外と元気そうにしてるけどね?」

「そ、そんなことないって」

「まぁいいけどさ」

カスミが信じてくれたことにホッとする。

「でもさ、愛奈ってムカつくね。今度はカスミもアイツのこといためつけてよ」

「何よ急に」

「別に~。なんか気にくわないなぁって」

「アンタが急にそんなこと言いだすなんて、ね」

カスミがあたしをジッと見つめる。

あたしはカスミに心の中を悟られないようにできるだけ平静を装って笑顔を浮かべた。


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