イジメ返し―新たな復讐―
「これ……」

それは真紀がくれたパンだった。お金もなくギリギリの生活をしていたはずの真紀がくれたパン。

あたしは愛奈だけでなく真紀にも酷いことをたくさんした。

小学校の時だってそうだ。真紀を遊びに誘って意図的にその場に置き去りにしたりした。

自分と同じような苦痛を誰かに味わわせたかった。

自分と同じように誰かが不幸せになることを望んでいた。そうすることでしか生きている価値を見出すことができなかったから。

なんて惨めな人間なんだろう。今になって気付くなんてどうかしている。

つぶれてぺちゃんこになってしまったパンの包みを震える手で空けて、カラカラに乾いてしまっている喉に押し込む。

その瞬間、自然と涙が溢れた。

真紀はこのパンをどんな気持ちであたしにくれたんだろうか。
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