イジメ返し―新たな復讐―
本当は言いたくない。でも、もし言わなければカスミちゃんの怒りに火を注ぐことになるのは明らかだ。
わたしに選択する余地などない。
「せ、先生……」
右手を恐る恐る持ち上げると、伊藤先生はわたしに視線を向けてにっこりと微笑んだ。
「あらっ、珍しい。積極的に手を挙げるなんて偉いわ。じゃあ、林さん。この答えを教えて」
伊藤先生はわたしと目が合うと眼鏡の下の瞳をわずかに細めた。
先生、やめて。偉いなんてほめたりしないで。
わたしが今からしようとしている行為は褒められるような行為じゃない。
「先生の……」
スカートをギュッと握り締める。
「今日の洋服……ちょっとダサいです……」
絞りだしたようなわたしの言葉は蚊の鳴くような小さな声だった。
先生がどんな反応をしているのかは分からない。
でも、わたしの言葉の後ほんのわずかにピりついた空気が教室中に流れた。