イジメ返し―新たな復讐―
「愛奈～！先生に消しゴム投げちゃダメじゃん！」

「え……？」

カスミちゃんの言葉に顔が強張る。

「でもさぁ、愛奈が先生に消しゴム投げつけたくなる気持ちも分かるー。先生の授業って退屈だし何も頭に入ってこないし。教え方が下手なんだよ、アンタ」

「私の教え方が下手？」

先生は床に転がった消しゴムを拾い上げるとカスミちゃんに聞き返した。

わたしを含めたクラスメイト達はみんなカスミちゃんの動向を見つめている。

「そう。前からずっと思ってたんだよねぇ。なんかアンタの授業って固いんだよ。真面目感が半端ないの。なんか面白いこと言ったりできないわけ～？」

「ごめんなさいね、真面目で。でもね、先生は真面目なことが自分の長所でもあると思ってるの。だから、これからも私は真面目を貫くわ」

先生はさらりとそう言ってカスミちゃんの言葉をかわすと、わたしの席の方へと歩み寄ってきた。

そして机の上にあるわたしの消しゴムを一瞥した後、先生は全てを悟ったようにわたしに優しく微笑み再び教壇に立った。

「この消しゴムを投げた人は直接先生のところに取りに来てください。先生がそれまで保管しておきます」

その言葉と同時に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

先生はわたしを疑っていないの……？

先生が出て行くと、カスミちゃんがズズッとわざと大きな音を立てて椅子から立ち上がった。

そして、教壇の上に立つと教卓をバンッと両手で叩いた。

「アイツの授業、これからボイコットね。もしあたしの言うこと聞かなかったら許さないから」

カスミちゃんの言葉に教室中がシンっと水を打ったかのように静まり返る。

手が小刻みに震える。先生がカスミちゃんのターゲットに決まった瞬間だった。

その日から、カスミちゃんは伊藤先生へのイジメをスタートさせた。

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