イジメ返し―新たな復讐―
動きがおかしいのは自分でもわかっていたし、恐ろしいほどひどいダンスになっているに違いない。

でも、二人が満足したならそれでいいとおもった。

これできっと二人は満足し、うちから出て行くに違いない。

時計の針を確認する。もうすぐ18時だ。そろそろ母も帰ってくるはずだ。

そうすれば二人だってきっと……。

「うち、ちょっとトイレ行ってくる。愛奈、トイレ借りるよ」

「志穂、待って。あたしも行く」

二人そろって部屋から出て行き、張り詰めていた糸がプツリと切れたわたしはベッドにドスンっと倒れるように腰かけた。

学校でも神経をすり減らしているのに放課後まで二人に気を遣わないといけないなんて。

二人が座っていた辺りからはタバコと香水のまじったような独特の匂いがする。

「どうしよう……」

撮影したわたしの動画を二人は一体どうするつもりだろう。

二人との距離ができたことでほんの少しだけ冷静さを取り戻す。

今になって安易な気持ちで動画を撮らせてしまったことへの後悔が沸き上がってくる。

二人だけの笑いのネタにするだけではすまないだろう。

動画投稿サイトにアップする気……?できるだけ顔が分からないようにうつむき加減で踊ったけれど見る人が見たらわたしだと分かるだろうか?

笑顔を浮かべて踊り狂う自分の姿を想像しただけでゾッとする。

わたしはそういうキャラではないのだ。

二人は何度わたしが頼んでも撮った動画を見せてはくれなかった。

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