イジメ返し―新たな復讐―
「ちょっと愛奈~。アンタ、最近クラスで浮いちゃってるじゃん。どうしちゃったわけ~?」

その日、カスミちゃんは上機嫌でわたしに声をかけてきた。

どうしちゃった……?こうなるように仕向けたのは自分でしょ……?

「暗い顔すんなって。あたしまで暗い気持ちになっちゃうじゃん」

「カスミちゃん……何か用……?」

「あー、あのね、今日あたしと志穂と真紀の3人でちょっと買い物行くことになってさ。で、ちょっと金貸してほしいんだよね」

「真紀と……?」

衝撃的だった。真紀がカスミちゃんたちと遊ぶことなんてここ最近はなかったはずだ。

「そうそう。今日、たまたま話す時間があってさ。あの子面白いし『一緒に遊ぶ?』って誘ったら遊ぶっていうから。でも、今手持ち無くてさ」

「わたしも……持ってないよ……」

「ハァ~?持ってんじゃん!通帳にあんなに入ってたのに、何言ってんの?」

「あれは……使えないお金なの」

あれはわたしの未来のためのお金だ。

「大丈夫だって。2,3万だし。すぐ返すから」

「ごめん。今日は……予定があるから」

頭の中をフル回転させて断る理由を探す。

「ハァ~?何予定って」

「今日はどうしても外せない用事があるから。だから――」

「でも、家帰るんでしょ?じゃあ、アプリで送金してよ」

「アプリ……?」

「アンタ、あのアプリ持ってる?ほら、あの……――」

スマホを取り出してそこまで言ってからカスミちゃんは思い直したようにこう言った。

「やっぱやめる。直接手渡しね」

スマホ間でお金の送金ができるのは知っていた。

カスミちゃんも知っていたに違いない。でも、すぐにやめると言い出した。

それがどうしてか手に取るようにわかる。

スマホ間で送金すれば、カスミちゃんとわたしがお金のやりとりをしたという証拠が残ってしまう。カスミちゃんはそれを嫌がっている。

ということは最初から返す気などないということ。

わたしからお金を借りるのではなく、奪い取ろうという魂胆なのだ。

ポケットにスマホをしまうと、カスミちゃんはにっこりと笑いながら言い聞かせすように言った。
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