イジメ返し―新たな復讐―
「別に断ってもいいけど、それならあたしにも考えがあるから。あの動画、クラス全員に回してもいいの?」
「そんな……!」
「アンタが家で踊り狂ってるあの動画のことね。見られて恥ずかしくない?これ以上クラスの奴らに嫌われたら、きついよねぇ。そうじゃなくてもアンタみんなから嫌われてるもんねぇ。佐知子に憎まれたのが運の尽きってやつ~?やっぱ、アイツってデブだけあって粘着質だからねっ」
クスクスと楽しそうに笑うカスミちゃんに顔が引きつる。
「あと、この動画アンタのお父さんに送り付けてもいいけど。アンタのお父さんっていいとこの会社に勤めてるんだよね。だからアンタも金持ってるんでしょ?ちょっとくらい分けてくれたっていいじゃん」
顔が引きつる。
「やめて。それだけはお願いだからやめて……」
父は厳しい人間だ。こんなふざけた動画を見られたらきっと搾り上げられるに違いない。
『よくも俺の面子を潰したな!?』
と激高し、一発二発殴られてもおかしくはないだろう。
「どうしようかなぁ~?アンタ次第ではこの動画をネットに上げてもいいけど。結構バズると思うんだよねぇ。愛奈、すっごーく楽しそうに踊ってるくせに、動きは下手くそだから面白いもん」
「――1万5千円なら」
「は?」
「今日、買うものがあってお金持ってたからそれだけならあるよ。それでもいい?」
「うーん、まぁいっか。じゃ、あとでもってきて」
「分かった……」
カスミちゃんは満足げにさっさとわたしに背中を向けて自分の席へ戻っていった。