イジメ返し―新たな復讐―
「そっか。それならよかった」

真紀はそう言うと、優しく微笑んだ。

「とにかく、わたしはやめた方がいいと思うの。真紀にとっていいことなんて何もないよ?」

必死になって忠告をしているわたしに真紀が視線を向ける。

「あたしのことは大丈夫だから心配しないで。それより、あたしもちょっと愛奈に聞きたいことがあるの」

「なに?」

「佐知子のこと。佐知子たちからちょっと話を聞いたの」

「うん……」

同じクラスのことだしいつかは真紀の耳にも入るだろうということは予想がついていた。

「佐知子のことみんなの前でいじろうとしたって本当?」

「ち、違う!わたしはいじろうとなんてしてないよ。そんなことするはずないもん。でも、カスミちゃんが――」

「愛奈はそんなことしないって分かってるよ。でも……――」

真紀は思ったことがすぐ顔に出る。

言葉を濁しているけど、真紀はこう思っている。

『愛奈、最低だよ。佐知子が可哀想』って。

真紀もみんなと同じ。

わたしの言うことなんて信じてくれないし、話を聞こうともしてくれない。

カスミちゃんやクラスメイトの言葉ばかりを鵜呑みにして、わたしのことなんてこれっぽっちも考えてくれない。

グッと唇を噛みしめる。

わたしは真紀の言うことなら信じるのに。それなのに、真紀は……。

「もしもなにか少しでも心当たりがあるなら、ちゃんと佐知子に謝った方がいいと思うんだ」

「わたしが?佐知子に謝る?どうして?」

「あたしもその場にいなかったし詳しいことは分かんない。でも、教室に戻ってきた佐知子泣いてた……。すごく傷付いた様子だったよ?もしも誤解があるなら、佐知子ときちんと話した方がいいと思う。愛奈のいう通り誤解ならちゃんと佐知子に――」

「……ていうか、わたしだって十分傷付いてる!!現に今、佐知子たちに無視されて毎日学校に行くのが嫌になってる!!わたしがひどいなら、佐知子たちだって酷いでしょ!?」

「お互いに誤解してるのかもしれないよ?だったらなおさら謝って仲直りしないと。佐知子だってちゃんと謝れば許してくれるよ。ねっ、愛奈。そうしよう?あたしが間に入ってもいいし、それに――」


「真紀はわたしが悪いって思ってるんだよね?だから、わたしから謝れって言うんでしょ?」

「あたしはただ、愛奈とみんなが仲良く―― 」

「仲良くも仲直りもできない!真紀は休んでばっかりで何も知らないからそんなことが言えるんでしょ!?」

わたしは怒りに打ち震えながら叫んだ。

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