きみと秘密を作る夜

引力



引っ越してきて、1週間と少しが過ぎた。


荷解きは、すでに終わってしまっている。

生活に慣れてみれば、ひとりきりの夏休みは、果てしなく暇だった。



「うちにばかりこもってたら、溶けちゃうよ?」


祖母の言葉にげんなりする私。



「この暑さだよ? 外に出た方が溶けちゃうよ」

「いい若いもんが、何を言っているんだかねぇ。最近の子が外で遊ばないっていうのは本当みたいだねぇ」

「いや、それ、小学生の話でしょ」

「小学生も中学生も、おばあちゃんにとっては同じだよ。あぁ、そうだ。お隣のハルくんに遊んでもらうとか」

「だから小学生じゃないっつーの」


大体、何で私が、暇だからってあいつに遊んでもらわなくちゃいけないの?

あんな、たまたま隣に住んでるってだけのやつに。



「じゃあ、コンビニでも行ってくるよ。アイス食べたいし」

「お蕎麦屋さんを右だからね」

「ふぁーい。行ってきまーす」


うだるような暑さの中、家を出て、祖母に聞いた道順の通りに進んで行く。


田んぼと畑と家ばかりの、どこまで行っても変わり映えのない景色。

どうにかコンビニまで辿り着いた時には、私はつまらない町並みに飽き飽きしていた。



コンビニで、アイスと炭酸飲料、それからお菓子を手にする。

雑誌も見たけれど、どうせ流行りの服なんて買えそうな場所もないだろうしと、早々に読むのを諦めた。



買いたいものだけを買い、コンビニを出て、家の方に向かって歩く。

他に知っている場所も、行きたい場所もないので、真っ直ぐ家に帰るしかない。


しかし、数分歩いたところで、異変に気付いた。



「てか、ここどこ?」
< 10 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop