きみと秘密を作る夜
引力
引っ越してきて、1週間と少しが過ぎた。
荷解きは、すでに終わってしまっている。
生活に慣れてみれば、ひとりきりの夏休みは、果てしなく暇だった。
「うちにばかりこもってたら、溶けちゃうよ?」
祖母の言葉にげんなりする私。
「この暑さだよ? 外に出た方が溶けちゃうよ」
「いい若いもんが、何を言っているんだかねぇ。最近の子が外で遊ばないっていうのは本当みたいだねぇ」
「いや、それ、小学生の話でしょ」
「小学生も中学生も、おばあちゃんにとっては同じだよ。あぁ、そうだ。お隣のハルくんに遊んでもらうとか」
「だから小学生じゃないっつーの」
大体、何で私が、暇だからってあいつに遊んでもらわなくちゃいけないの?
あんな、たまたま隣に住んでるってだけのやつに。
「じゃあ、コンビニでも行ってくるよ。アイス食べたいし」
「お蕎麦屋さんを右だからね」
「ふぁーい。行ってきまーす」
うだるような暑さの中、家を出て、祖母に聞いた道順の通りに進んで行く。
田んぼと畑と家ばかりの、どこまで行っても変わり映えのない景色。
どうにかコンビニまで辿り着いた時には、私はつまらない町並みに飽き飽きしていた。
コンビニで、アイスと炭酸飲料、それからお菓子を手にする。
雑誌も見たけれど、どうせ流行りの服なんて買えそうな場所もないだろうしと、早々に読むのを諦めた。
買いたいものだけを買い、コンビニを出て、家の方に向かって歩く。
他に知っている場所も、行きたい場所もないので、真っ直ぐ家に帰るしかない。
しかし、数分歩いたところで、異変に気付いた。
「てか、ここどこ?」