きみと秘密を作る夜
「ねぇ、晴人」
「何?」
「私、あの頃、晴人のこと好きだったみたい」
私の唐突な告白に、晴人の顔がゆっくりと向く。
「でももう、終わり。そういう気持ちは、今年に置いていく。で、来年は、ちゃんと誰かと付き合いたいなって」
その時、遠くで除夜の鐘が鳴り始めた。
もうすぐ今年が終わって、新しい年がやってくる。
「里菜子」
鐘の音が響く中、晴人は小さく私の名前を呼んだ。
けれど、何か言われるのが怖かった。
「ごめんね、変なこと言って。でも、言えてよかった。何か、すっきりした」
それは私の本心だった。
ずっと内に秘めていた想い。
それを言葉にした瞬間、何だか少しだけ、気持ちが浄化された気がしたから。
私はちゃんと、前に進みたかったのだ。
「お前のこと幸せにしてくれる男は、きっといるよ」
晴人はそう言って、立ち上がった。
まさか励まされるとは思わなくて、少し驚く。
晴人は自分のしていたマフラーを外し、それを私の首にかけた。
「やるよ」
「え? でも……」
「何か見てて寒そうだったし。いらねぇなら捨てときゃいいから」
モスグリーンのマフラーは、忘れかけていたはずの、晴人の匂いがした。
あたたかくて、そして懐かしくて、泣きそうになる。
「じゃあな、里菜子」
除夜の鐘は、いつの間にか鳴り終わっていた。
だから何も言えなかったのかもしれない。
去って行く晴人の背中を、私はただ眺めることしかできなかった。
「何?」
「私、あの頃、晴人のこと好きだったみたい」
私の唐突な告白に、晴人の顔がゆっくりと向く。
「でももう、終わり。そういう気持ちは、今年に置いていく。で、来年は、ちゃんと誰かと付き合いたいなって」
その時、遠くで除夜の鐘が鳴り始めた。
もうすぐ今年が終わって、新しい年がやってくる。
「里菜子」
鐘の音が響く中、晴人は小さく私の名前を呼んだ。
けれど、何か言われるのが怖かった。
「ごめんね、変なこと言って。でも、言えてよかった。何か、すっきりした」
それは私の本心だった。
ずっと内に秘めていた想い。
それを言葉にした瞬間、何だか少しだけ、気持ちが浄化された気がしたから。
私はちゃんと、前に進みたかったのだ。
「お前のこと幸せにしてくれる男は、きっといるよ」
晴人はそう言って、立ち上がった。
まさか励まされるとは思わなくて、少し驚く。
晴人は自分のしていたマフラーを外し、それを私の首にかけた。
「やるよ」
「え? でも……」
「何か見てて寒そうだったし。いらねぇなら捨てときゃいいから」
モスグリーンのマフラーは、忘れかけていたはずの、晴人の匂いがした。
あたたかくて、そして懐かしくて、泣きそうになる。
「じゃあな、里菜子」
除夜の鐘は、いつの間にか鳴り終わっていた。
だから何も言えなかったのかもしれない。
去って行く晴人の背中を、私はただ眺めることしかできなかった。