きみと秘密を作る夜
晴人からもらったマフラーは、使うことも捨てることもできなかった。
だったら洗って返そうかとも思ったけど、今更、会うべきじゃない気がしたから。
結局、私は、マフラーをクローゼットの奥に押し込み、自分の気持ちと一緒に封印した。
晴人とは、あれからまた、目も合わせない毎日に戻った。
でも、それでいいと、今は思う。
私たちはもう、別々の道の上にいるのだから。
3学期になって、晴人とカノジョが別れたらしいと噂になった。
実際、それからふたりが一緒にいる姿は見ていない。
やっぱり上手くいってなかったのかもしれないけれど、お互いがその結論を出したのなら、私は仕方ないと思うよりほかになかった。
そして受験を終え、私は西高に合格した。
担任の先生には、最後まで、もっとレベルの高いところに出願するべきだと言われたが、しかしギリギリで別の高校を探す気力はなかった。
私は西高しか知らないから、だから西高を受ける以外のことをしようとは思わなかっただけ。
西高の受験会場に、晴人はいなかった。
晴人がどこの高校を受験したのかは知らない。
受かったのか落ちたのかすらもわからないが、それを知ることに意味はない。
とにかく私は西高に合格し、そして春から晴人とは別々の高校に進むこととなった。