きみと秘密を作る夜
右を見ても、左を見ても、同じにしか見えない。

完全に迷ってしまった。



「ありえないんだけど……」


降り注ぐ、直射日光。

頼れるような知り合いは誰もいないし、通行人に聞こうにも、私はまだ家の住所すら覚えていなかった。


途方に暮れて立ち尽くしていた時、こちらに向かってくる自転車が見えた。



「あー!」


考えるより先に声を上げていた。

相手は私の声に驚き、慌ててブレーキを掛ける。


お隣さんちの『ハルくん』だ。



「ねぇ、ここはどこ!? 私の家はどっち!?」

「はぁ?」

「道に迷ったの!」


恥ずかしさはあったが、それよりとにかく家に帰りたかった。

『ハルくん』は怪訝な顔をしながらも、私がコンビニの袋を手にしていたのを見て取り、すべてを悟ったらしく、



「すげぇ方向音痴だな」


と、言った。



「お前、クリーニング屋の角、逆に曲がったんじゃね?」

「え……」

「家、反対だし。つーか、普通、こんなとこまで歩く前に気付かねぇ? かなり遠いけど」


バカにされているのだろうことはわかる。

でも、今更、ひとりで帰れるはずもない。


こいつに頼るのは非常に癪だが、でも仕方がないのだと自分に言い聞かせた。



「ねぇ、家まで乗せてってよ」

「何で俺が」
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