きみと秘密を作る夜
放課後、あさひと一緒に帰ろうとしていた時に、「小泉さん」と、呼び止められた。
振り返ると、やたらと背の高い男が。
「すすす、好きです!」
いきなりのことに驚き、私は隣にいたあさひと顔を見合わせる。
「小泉さん! あ、あの、もしカレシとかいないんだったら、まずは友達からでもいいんで」
「ごめんなさい」
私の即答に、あさひはぶはっと吹き出しそうになる口元を、慌てて押さえる。
何もおもしろくないんだけど。
私はそのまま帰ろうと思ったが、しかし男は納得していない様子。
「どど、どうしてダメなんですか! せめて、チャンスを」
「無理」
言い捨て、私は茫然とした男を残して今度こそ足を踏み出した。
あさひは「待ってよ」と、笑いながら追いかけてくる。
「ねぇ、今度のやつは何でダメだったの?」
「名前も名乗らない、同い年か先輩かもわからない、今初めて会った人と付き合える?」
「友達からでいいって言ってたじゃん」
「友達ならあさひで事足りてるから、余計にいらないよ」
私の言葉に、あさひはあからさまに肩をすくめて見せる。