きみと秘密を作る夜


放課後、あさひと一緒に帰ろうとしていた時に、「小泉さん」と、呼び止められた。

振り返ると、やたらと背の高い男が。



「すすす、好きです!」


いきなりのことに驚き、私は隣にいたあさひと顔を見合わせる。



「小泉さん! あ、あの、もしカレシとかいないんだったら、まずは友達からでもいいんで」

「ごめんなさい」


私の即答に、あさひはぶはっと吹き出しそうになる口元を、慌てて押さえる。

何もおもしろくないんだけど。


私はそのまま帰ろうと思ったが、しかし男は納得していない様子。



「どど、どうしてダメなんですか! せめて、チャンスを」

「無理」


言い捨て、私は茫然とした男を残して今度こそ足を踏み出した。

あさひは「待ってよ」と、笑いながら追いかけてくる。



「ねぇ、今度のやつは何でダメだったの?」

「名前も名乗らない、同い年か先輩かもわからない、今初めて会った人と付き合える?」

「友達からでいいって言ってたじゃん」

「友達ならあさひで事足りてるから、余計にいらないよ」


私の言葉に、あさひはあからさまに肩をすくめて見せる。
< 111 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop