きみと秘密を作る夜
「入学してから何人目だっけ」

「さぁ? 3人目か4人目か5人目か」

「どうせカレシいないんだから物は試しで付き合ってみればいいのに」

「私のこと何も知らないで好きとか簡単に言えちゃうような人のこと、私は好きになれないんだけど」

「モテるのに、もったいない」

「あさひといるから目立つだけだよ。ギャルは近寄りがたいけど、隣にいる、見た目が大人しそうな私ならすぐヤレそうとか思われてるだけじゃん?」


高校に入学してから、なぜか私はやたらと告白されるようになった。

確かに来年はカレシがほしいと思ったりもしたが、しかし私だって誰かもわからない人と付き合いたいわけじゃない。



「ねぇ、ヤリ捨てられたトラウマでもあんの?」


あさひの鋭い問いに、どきりとするが、



「私は私のことだけちゃんと大切にしてくれる人と付き合いたいだけだよ」


と、返す。


必死で記憶を押し込め、忘れようとしているのに、時々ふと、あの頃のことを思い出すことがある。

傷は、まだ膿んだまま。

< 112 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop