きみと秘密を作る夜
あさひとは、そのまま学校の最寄り駅で別れた。
あさひはバイトで、私は家事の手伝いがあるためだ。
私も高校生になったことだし、バイトのひとつでもしようと思ったが、しかし入学後にまた祖母の体調が悪化したため、心配でなるべく傍にいることを選んだ。
電車に乗って30分で地元の駅に到着し、そこからバスで15分、さらにバスを降りて10分歩く。
田舎はつくづく不便だなと、毎日思うことを今日も思いながら、歩き慣れた帰路を辿る。
もう少しで家だというところまできた時だった。
ブオン、というエンジン音と共に、正面から走ってきたバイクは、風のように私の横を駆け抜けた。
不意に運転手と目が合ったが、でもそれも1秒か2秒ほど。
運転しているのは、晴人だった。
5月生まれとはいえ、1ヵ月でバイクの免許って取れるんだろうか。
まさか無免許だったりするのかも?
それよりバイクって高そうだけど、自分で買ったのかな。
なんて、どうでもいいことが頭をよぎる。
この前はヤンキーみたいな集団とコンビニでたむろって、一緒に煙草を吸っている姿を目撃した。
見た目だけなら絶対に近付きたいとは思わない感じだった。
紺色のブレザーに青いネクタイをした晴人は、もうすっかり、あの頃とは別人だ。