きみと秘密を作る夜


私の作った食事を半分ほど食べた祖母は、薬を飲み、また眠ってしまった。



最近の祖母は、極端に眠る時間が増えたように思う。

その所為で目に見えて体力は低下し、家の中ですら歩くことが減っていた。


無理をしてでも歩かせるべきなのか、それとも今ゆっくりしていればそのうち元のように元気になってくれるのか。



ため息混じりに片付けを終え、私はやっと自室で息をつく。



閉めたままのカーテン。

忘れたいのに、隣に住んでるってのは本当に厄介だ。



「……疲れた」


呟いて、私はDVDをプレーヤーにセットした。


入学祝いで買ってもらったそれは、今や私の生活に欠かせないものとなっていた。

ひとりっきりの長い夜は、借りてきた映画を観て時間を潰す。



クッションを抱えてプレーヤーの前に座ると、オープニング画面が映る。



古いフランス映画。

貴族の娘が家を飛び出し、自分の人生を探す旅に出る様子が、美しい中世の風景と共に、淡々と流れていく。


私はそれに見入っていた。



映画はいい。

その時間だけ、別の世界に浸れるから。


余計なことは何も考えずに済むから。

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