きみと秘密を作る夜

芽吹き



梅雨。

珍しく雨の中休みとなった日曜日に、私とあさひは街に出ていた。


夏物の服を買い、流行りのタピオカを飲みながら歩く。



「ねぇ、リナ」

「何? クレープはもういらないよ」

「じゃなくてさ。さっき撮ったプリクラ、SNSに上げたら、何人かからリナのこと紹介してってコメントきてんだけど」

「あんたはまた勝手なことを」

「ちゃんと鍵垢だよ?」

「そういう問題じゃないから」


思わず私はこめかみを押さえてしまう。

しかしあさひは悪びれてもいない顔。



「ほら、この人とか私のバイト先の先輩なんだけど」

「やめてよ。興味ないって言ってるでしょ」


あさひが見せてくるスマホのディスプレイを押し返す。

頑なな私の態度に、あさひは少し不機嫌になった。



「あのさ、知らない人は嫌だっていうリナの気持ちはわかるけど、でも知り合わなきゃ始まらないし、お互いのこと知ろうとしなきゃ、ずっと何も進まないよ?」


確かにあさひの言うことは正論だと思う。

けれど、出会うための出会いは、あまり好きじゃない。
< 117 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop