きみと秘密を作る夜
芽吹き
梅雨。
珍しく雨の中休みとなった日曜日に、私とあさひは街に出ていた。
夏物の服を買い、流行りのタピオカを飲みながら歩く。
「ねぇ、リナ」
「何? クレープはもういらないよ」
「じゃなくてさ。さっき撮ったプリクラ、SNSに上げたら、何人かからリナのこと紹介してってコメントきてんだけど」
「あんたはまた勝手なことを」
「ちゃんと鍵垢だよ?」
「そういう問題じゃないから」
思わず私はこめかみを押さえてしまう。
しかしあさひは悪びれてもいない顔。
「ほら、この人とか私のバイト先の先輩なんだけど」
「やめてよ。興味ないって言ってるでしょ」
あさひが見せてくるスマホのディスプレイを押し返す。
頑なな私の態度に、あさひは少し不機嫌になった。
「あのさ、知らない人は嫌だっていうリナの気持ちはわかるけど、でも知り合わなきゃ始まらないし、お互いのこと知ろうとしなきゃ、ずっと何も進まないよ?」
確かにあさひの言うことは正論だと思う。
けれど、出会うための出会いは、あまり好きじゃない。