きみと秘密を作る夜
しかし、翌日。
自習中に必死でプリントに文字を書き込んでいく私の横で、あさひはメイクを直しながら話し掛けてくる。
「ねぇ、遼がさぁ」
「誰?」
「昨日会ったじゃん。船橋 遼」
「あぁ」
すでに顔はうろ覚えだ。
と、いうか、頼むから勉強の邪魔をしないでほしいのだけど。
「遼がね、今度みんなで遊ぼうって言ってたんだけど」
「みんなって誰よ」
「東工の人じゃん?」
「何?」
「東川工業高校。遼の学校ね。イケメン率高いって有名な」
そこまで聞き、私はいかにこの会話が無意味であったかと思う。
ペンを置き、私はあさひに向き直った。
「あのさ」
「ん?」
「そんなことより、来週テストあんのわかってる? あさひ、今回も赤点だったら夏休みに補習だよ? 遊んでる場合じゃないんだよ?」
「でも息抜きも大事じゃん」
「大事なのは勉強だから!」
強く言う私。
あさひは苦い顔を向けてくるが、そんなの気にしていられなかった。