きみと秘密を作る夜
梅雨が明けたその日に、テストは終わった。
私は無事に上位の成績をキープし、あさひも今回はどうにか赤点を免れたらしい。
ふたりで大喜びのまま、夏休みに突入した。
去年は受験生だったために我慢ばかりだったが、今年は弾けようと言ったあさひと、何をしようかと話し合った末に、まずは遊び代を稼ぐためにふたりで短期のバイトに応募してみることにした。
平日午後の数時間、街でフライヤーを配るバイトだ。
暑くて大変だったし、最初は無視されただけでいちいち落ち込んだりもしていたが、しかし休憩中に色んな年代のスタッフと仲よく慣れたのは嬉しかった。
大学生や若い主婦が多くて、毎回違う人がくるので、何だかサークルみたいな雰囲気だった。
当然だけど、世の中には私が思っている以上にたくさんの人がいて、そのそれぞれに、過ごしてきた人生があった。
私たちは遊び代を稼ぐためのバイトだったが、「親の借金を返すため」だと、笑いながら言っていた人もいた。
それから、働くことの苦労も少しだけわかった。
「どけよ」と怖いおじさんに突き飛ばされても笑顔でいなきゃいけなかったし、社員さんは本社との連絡やバイトの調整なんかで常に走りまわっていて、最終的には熱中症で倒れてしまっていた。
母もこうやって働いているのかと思ったら、まだ許せない気持ちはあるものの、家事くらい手伝うのは当然かなと、やっと少しだけ思うことができた。
とにかく、取っ払いでバイト代がもらえることの楽さもあったが、それ以上にたくさんのことに刺激され、私とあさひは、これを夏休みの間は定期的にやろうと約束した。