きみと秘密を作る夜


その日は月に一度の、映画館の学生割引の日だった。


普段はお金がないのでDVDをレンタルするばかりの私だが、この日だけは、映画館の大スクリーンで、新作映画を堪能する。

やっぱりスクリーンの大きさにふさわしい、大迫力のアクションがいいなと思い、チケットを購入して、指定された席に座った。



あさひは、映画を観ていると眠くなってしまうらしく、絶対に誘いに乗ってくれない。

いつもはドーナツ屋だの何だのと私を連れまわすくせに、薄情なものだなと、毎月のように思ってしまう。



私のまわりの席には、仕事帰りのサラリーマンや、怪しいカップルしかいない。

学生割引の日なのに学生がいないってどうなんだろう。


っていうか、この映画、あんまり人気がないのだろうか。



どうでもいいことを考えていると、やがて館内は暗くなり、近々公開作品の予告映像が流れ始めた。



最初は暇潰しと現実逃避で映画のDVDをレンタルしていただけだったけれど、今ではその魅力にどっぷりとハマまってしまった。

洋邦、新旧問わず、いい映画は私の心を豊かにしてくれる。


いつかの頃に失くしてしまった感情を、もしかしたら取り戻せるのではないかとも思うから。

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