きみと秘密を作る夜
「リナ、映画よく観るの?」

「いつもはお金ないし、レンタルばっかだけどね」

「俺も、俺も。俺の兄貴がレンタルショップでバイトしててさ、特別に割引で借りられんの。それで調子乗って借りまくってたらハマっちゃって」

「何それ、ズルくない?」

「でも身内の特権は利用しとかなきゃじゃん?」

「いいなぁ。私もレンタルショップでバイトしたいなぁ」


名前を呼び捨てされたことも気にせず、気付けば私は遼と話し込んでいた。



「最近はどんなの観た?」

「んー。邦画だと、矢口監督の作品は、全部観たよ」

「マジ? 俺も昨日、矢口監督の作品観たよ。飛行機内でのドタバタコメディ。あれすごい笑ったんだけど」

「ね? 最高だよね、あの作品」


話が合うな。

そこにまた驚いていたら、遼も「話が合うな」と私に言った。


遼は相変わらずの無邪気な顔で笑って立ち上がる。



「歩けそうなら、送る」


少し迷ったけれど、私はお言葉に甘えることにした。

こんなに誰かと話が盛り上がったのは久しぶりだったので、もう少しだけ楽しい気分でいたかったから。

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