きみと秘密を作る夜
クローバー
翌日。
「聞いたよぉ、リナぁ。昨日、遼と会ったんだってぇ?」
週に一度のフライヤー配りのバイトのために、駅で落ち合ったあさひの開口一番はそれだった。
朝から私はげんなりする。
「何かすっごい連絡くるんだけど」
スマホのメッセージ画面をあさひに見せる。
あさひはそれを食い入るように見て、「返信少なくない?」と言った。
「遼って打つの速いよね。ついていけなくて」
「何をババくさいこと言ってんのよ」
あさひは肩をすくめ、私の前に立つ。
「まぁ、でもさ、遼がいいやつなのは、私が保証するし」
「………」
「あいつはさ、見た目はチャラいけど、中身は一途なんだよ。カノジョとかすごい大事にするしさ」
確かに、見た目通りではなかったけれど。
だけど、すべてを信じて心を開こうとは、まだ思えない。
口ごもる私の気持ちを読み取ったように、あさひは言った。
「そんな深刻に考えることないじゃん? 普通に遊んで、楽しかったらそれでいいじゃん」
それはそうなのかもしれないが。
「夏休みだし、私もいるしさ。楽しんだもん勝ちじゃん?」
あさひの楽観的なところは、本当に心強い。
それに私がどれほど救われているかは、言葉には尽くせない。
「そうだね」とだけ私は返し、あさひと一緒に歩を進めた。