きみと秘密を作る夜
「私のどこを好きになったの?」

「え?」

「私なんて、何の取り柄もないのに。もっといい子、他にいくらでもいるでしょ?」

「『私なんて』って言葉は、俺は好きじゃない」


遼は真っ直ぐに私の目を見て言った。



「上手く言えないけどさ、俺、リナと初めて会った時、何でだか、泣きそうな顔してるように見えたんだ。その顔が、ずっと頭から離れなかった」

「………」

「それから偶然また会えて、話してみたらすっごいいい子で。趣味も一緒だし。あと、笑った顔が可愛くて。リナの笑顔、ずっと見てたいって思った」


私の、笑った顔。


遼といる時間に、悲しいことは何もない。

なぜなら遼は、私を絶対に傷付けない人だから。



「それだけの理由だよ。でも、俺の中では大きなことだけど」


遼は照れたように頬を掻きながら言った。



「だから、俺、思ったんだ。リナとふたりで、ずっと笑ってたいなって。俺がリナを笑顔にさせて、その笑顔を俺が一番近くで見てたいなって。そしたらきっと、俺たちは幸せになれるんじゃないかなって」
< 139 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop