きみと秘密を作る夜
「遼……」


泣きそうだった。

でも私はもう、上手く泣けない。



「私ね、人を信じるのが怖いの。信じて、また裏切られたら、次はきっともう立ち直れない」

「………」

「私も幸せになりたいのに……」


唇を噛み締めた瞬間。


おもむろに立ち上がった遼は、きょろきょろとあたりを見まわしたかと思うと、急に草地にしゃがみ込んだ。

そして一心不乱に何かを探し始める。



「……何してるの?」


不安になってその背に声を掛けた私に、



「リナの幸せを探してるの」


と、遼は答える。



空に弧を描く白球。

熱を帯びてそよぐ風。


わけもわからないまま、ただずっと、私は遼の背中を眺めていた。



次第にあたりはオレンジの色に染まり始める。

陽が傾き、近くにいた子供たちが「帰ろうよ」と言い合っている。


遼の手は土に汚れていたけれど、それでも必死で何かを探し続けている横顔が、ただただ私には眩しかった。

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