きみと秘密を作る夜
古傷
あの日、あのあと、私と遼は、駅までの道のりを、手を繋いで歩いた。
そして別れ際に、物陰でそっとキスをした。
あぁ、付き合うってこういうことなのかと、私は噛み締めるように思ったものだ。
「おめでとー!」
翌日、バイトの前に報告すると、あさひはまるで自分のことみたいに喜んでくれた。
何だかくすぐったい気持ちで、照れ臭かった。
「ねぇ、頼むから遼に変なこと吹き込まないでよね」
「わーかってるってば」
ケタケタと笑うあさひ。
私はため息混じりに肩をすくめた。
「まぁ、あさひには感謝してるしね」
「でしょ? 私も、ふたりがくっついてくれて、ほんとに嬉しい」
「うん。ありがとう」
今は素直にそう思える。
過去のことは『なかったこと』にして、遼と、幸せな未来を築いていきたい、と。
「でもたまには私とも遊んでよ? お泊まり会の約束だって忘れないでね」
「当たり前じゃん。あさひは私にとって、遼と同じくらい大切な存在だもん」
ふたりで笑う。
これからは、楽しいことばかりならいいのにと、私は思った。