きみと秘密を作る夜


夏休みとはいえ、私も遼もバイトがあるため、毎日は会えない。

だけど、会えた日は、ふたりで目いっぱい遊んだ。



それから、あさひの家にお泊まりもした。

いつも喋っているのに、それでも話題が尽きることはなかった。


あれほど友達なんていらないと思っていたはずなのに、なのに今の私にはあさひの存在はかけがえのないものだ。



今日も出掛けようとしていたら、玄関先で母に呼び止められた。



「リナ。あなた夏休みだからってちょっと遊び過ぎじゃない?」

「課題はもう終わってるよ」


母のお小言はうんざりだ。

しかし久しぶりに会話をした母の言葉は止まらない。



「大体、そのお化粧は何? 派手過ぎるわよ」

「私もう高校生だよ。これくらい普通だし。いちいち、あれもダメ、これもダメ、って言われたくないんだけど」

「ハメを外しすぎだって言ってるのよ。そんな恰好してたら、変な男の子が寄ってきて、またあの時みたいに」


あの時みたいに。

不意に蘇った残像に、体が震える。



「晴人の話はしないでよ!」


思わず大声が出た。


晴人と二度と関わるなと言ったのは母の方なのに、なのに事あるごとにその名を出される。

もう本当に、うんざりだ。

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