きみと秘密を作る夜
田舎町は、ひどく息苦しい。
あのまま、母から逃げるように街に出て、バイト終わりの遼と待ち合わせた。
「お待たせ」
遼の笑顔は、いつでも眩しい。
私の心の中とは正反対だ。
「どこ行く? あちぃよな。どっか入る?」
「別にどこでも」
どこでもいい。
どこへ行っても同じことだ。
私の言葉に、少しの間を置いて、遼は言った。
「じゃあ、俺んち行く?」
その意味くらいはわかるつもりだ。
付き合っているのだから、いつかはそういう日もくるだろうと思っていた。
むしろ、付き合っているのだから、それも当然だろうとも思う。
「今日、うち誰もいないんだ」
別に処女じゃないし。
ちゃんと付き合ってるんだし。
遼は、『ヤリたかっただけ』と言い捨てた晴人とは違う。
お決まりの言葉に顎先だけでうなづいて見せると、遼は無言で私の手を引いた。