きみと秘密を作る夜
最悪だった。
むしろ吐き気すらしたほどだった。
晴人との時にはあれほど何度も夢中になった行為だったのに、なのに遼とは何が違うのか。
行為を終えた私の体は、すっかり熱を失っていた。
しかし、せめてそれだけは、悟られないようにしなくちゃいけない。
「リナがガチガチだったから、俺まで緊張しちゃった」
今度こそ、私は上手く笑顔を作る。
「痛くなかった?」
「大丈夫」
ちっとも大丈夫なんかじゃないのに。
こんな状況で遼以外の人のことを考えてしまっている罪悪感に、私は圧し潰されてしまいそうだった。
「遼。好きだよ。私は遼のことが大好きなの」
私は、遼のことが好き。
必死で自分に言い聞かすように、繰り返す。
遼は私の言葉に、照れたような笑みを浮かべ、
「あー、俺、今、すっげぇ幸せだー」
と、じゃれるように、抱き付いてきた。
「バカ。もう、くすぐったいよ」
ふたりで抱き合いながら、キスをする。
私は幸せなはずなのに。
なのに、どうしてまだ、古傷は痛み続けるのだろう。
晴人との過去は、どうあがいたって実際に『あったこと』で、全然『なかったこと』になんてなってくれない絶望に、私はひどく打ちひしがれていた。