きみと秘密を作る夜
私はただ、過去を忘れて前に進みたいだけ。
それなのに、どうしてみんな、私の邪魔をするのだろう。
校舎を出て、ほとんど衝動的に、遼に電話をかけた。
「ねぇ、今から会えないかな」
「うーん。俺もリナに会いたいけど、このあとバイトだし」
「1分でいいの。顔見るだけでもいい。お願いだから」
必死な私に、電話口の向こうで遼は少し沈黙したが、すぐに「少しだけなら」と言ってくれた。
私はほっと安堵する。
遼の顔を見たら、きっとこの不安も消えてくれるはずだ。
電話を切り、私は遼との待ち合わせ場所であるコンビニへと向かう。
遼のバイト先の近くだ。
息を切らしながら到着すると、「リナー!」と私に手を振る遼の姿が見えた。
しかし、初めて見た制服姿に、私はひどく驚いてしまう。
その青いネクタイは、紛れもなく、晴人がしていたものと同じ。
「リナ、大丈夫?」
立ち尽くす私を不審に思ったのか、遼は怪訝な顔で近付いてくる。
「電話の時も変だったもんな。何かあった?」
いや、しかし、遼が通う工業高校は、いくつもの科に別れているらしいし。
たかが同じ学校というだけじゃないか。