きみと秘密を作る夜
「何でもないよ。学校でちょっと嫌なことがあっただけ」


私は必死で笑顔を作る。

遼も笑った。



「そういえば、制服で会うの、初めてだよな。ちょっと別人みたいっていうか、変な感じがするよ」

「そうだね」

「リナの制服姿、めちゃくちゃ可愛いから、俺、何か緊張するんだけど」

「何バカなこと言ってんのよ」


大丈夫。

私は大丈夫。


必死で自分にそう言い聞かせていた時。



「おい、遼。そろそろ時間が」


コンビニから出てきた、遼と同じ制服のその人は、私を見て目を見開いたまま。

嘘だと思いたかったのに。



「おー、ハル。もうそんな時間?」


どうして遼と晴人が。

困惑しきりの私を見て取った遼は、いつも通りの笑顔で言った。



「そういえば、会うの初めてだったよな。こいつ、ハル。同じ学校で、科は違うんだけど、偶然にもバイト先が同じで、仲よくなったんだ。俺ら、めちゃくちゃ話が合うんだよ。こいつ無愛想だから怖く見えるけど、ほんといいやつだから」


無邪気な笑顔の遼を、私は直視できなかった。



「ハル。この子が前から話してた、俺のカノジョのリナだよ。可愛いだろ? 惚れんなよ?」


遼の冗談に、笑うこともできない私たち。

あれほど忘れたいと思っていたはずの人が、今、目の前にいて、そして遼の友達だったという事実。
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