きみと秘密を作る夜


夜になり、私は酒屋の角で立っていた。


鈴虫の声がする。

星は、変わらず今日もそこにある。



やがて静かな通りにブオンとエンジン音が響き、ヘッドライトが私を照らした。

バイクは、私を見付けて減速し、目の前で止まる。



「邪魔だよ。どけ」

「待ってたの」

「今度はほんとにストーカーかよ」

「そんな冗談、今はいらない」


私の睨みに肩をすくめ、晴人はしぶしぶエンジンを切ってバイクを降りた。

この場所で、まさかこんな形でまた対峙することになるなんて。



「私が何でここで待ってたか、わかってるよね?」

「遼のことだろ」


晴人はため息混じりに煙草を咥える。

知らない匂い。



「まさかとは思ってたけど、遼の言ってた『カノジョのリナ』が、ほんとに里菜子だったなんてな」

「ねぇ、お願いだから、遼には絶対、私たちのこと知られないようにして」


必死に懇願する私。

晴人は煙草の煙を吐き出しながら聞いてきた。



「遼のことが好き?」

「好きだよ。一番、大切にしてる人だから」


はっきりと答える。

だから私はもう、晴人なんか好きじゃないのだ。
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