きみと秘密を作る夜
少しの間を置き、晴人は言った。



「あいつは俺なんかとは違って、びっくりするほど真っ直ぐで、めちゃくちゃいいやつだからな。別に今更、あんな昔のことほじくり返すつもりはねぇよ」

「それ、信じていいの?」


いぶかしく問う私。

晴人はまた、ため息に煙を混じらせる。



「お前とのことを遼に話して聞かせたって、俺にはメリットなんかねぇだろ」


それもそうだ。

晴人にとっても、遼は友達のはず。



「わかったよ」


私は息を吐いた。



「ごめんね、こんなことして。『二度と晴人に声かけない』って言ったのは私なのに。もう私たちは、赤の他人なのに」

「あぁ、そうだな」


晴人の言葉は無機質だった。

それを聞き、私は「じゃあね」と言って背を向ける。


家に帰ろうと足を踏み出した時、



「里菜子」


と、晴人は私を呼び止めた。



「遼といたら楽しいだろ? あいつはきっとお前のこと幸せにしてくれるよ。俺が保証するから、信じてろ」


応援されているのか、何なのか。

私を裏切った、一切信用できない男のくせに。


だけど、何だかおかしくて、私は笑いながら「ありがと」と返した。



「ばいばい、晴人」


今度こそ、本当に。

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