きみと秘密を作る夜
真っ直ぐ進み、坂道を登った先には、神社があった。
心霊スポット的な涼しさは求めてないんだけど。
「えっ、ちょっ、待っ」
自転車を降りた晴人は、無言で石階段をのぼっていく。
「ちょっと待ってよ。これ、逆に汗かくじゃん」
「いいもん見せてやる」
いいもの?
眉根を寄せながらも、足を止めない晴人の背中を、仕方がなしに追う私。
晴人は石階段をのぼり終えると、境内には入らず、その脇にある【立ち入り禁止】と書かれたロープを越えて、またさらに進んで行った。
「ねぇ、ここって入ったらまずいんじゃない? こっちに何があるの? 祟られたらどうすんの?」
道はない。
完全に山の中だ。
確かに空気はひんやりしているが、息も切れ切れに、遭難したらどうするんだとすら私は思ったが。
「ほら、見えた」
そう言って足を止めた晴人の視線の先は、崖になっていた。
生い茂る木の葉の隙間から、町並みと、その先に広がる海が見える。
「あぁ、確かに、天然の展望台みたいな? でもよく見えないなぁ」
「この上からだともっとちゃんと見えるよ」
そう言ったかと思うと、晴人は、傍にある大木の幹に足を掛け、ひょいひょいとのぼり始めた。
私は思わず呆気に取られてしまう。
「え? 何やってんの?」
「だからぁ、この上からの方がよく見えんだよ」
「いや、でも、私、木登りなんてしたことないし」
「んじゃあ、見られねぇな」
上の方からバカにしたように言われ、無性に腹が立った。
私は、やればできる子なのだ。