きみと秘密を作る夜
「先輩の先輩がやってる店があんの。俺もたまに顔出してるし。未成年でも何も言われないよ。俺のまわりのやつらも入り浸ってるもん。だから、大丈夫」


何がどう大丈夫なのか、全然わからない。

けれど、あさひはそれに反応した。



「かっこいい人いる?」

「いるよ。もちろん独身。みんな顔見知りみたいなもんだから、名前も年も嘘つけないし。いいやついたら紹介してやっからさ」


遼の言葉に、あさひの顔はぱあっと明るくなった。

が、私はといえば、頭が痛くなるばかりだ。


あさひから見えない位置で、私は遼の腕を引いた。



「ねぇ。いくら面倒になったからって、手っ取り早くお酒と男であさひのご機嫌を取ろうとするやり方は、好きじゃないんだけど」

「何言ってんだよ。あさひも喜んでんじゃん。こういう時だし、たまにはぱーっとハメ外すのもいいだろ? それに、失恋したら次の恋って、常識じゃん」


それはそうなのかもしれないけれど。

もやもやする気持ちはあったが、「早く行こうよ」と言ったあさひが、久しぶりに笑っていたので、私はもうそれ以上、何も言えなくなってしまった。

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